Uチップの傑作 DOVER
イギリス・ノーサンプトンで、130年以上にわたり最高峰の靴づくりを続ける名門、エドワードグリーン。
そんなエドワードグリーンを語るうえで、決して外すことのできない一足が今回ご紹介する「ドーバー」です。

ドーバーは一見すると端正なUチップですが、その真価はモカ縫い(U字部のステッチ)にあります。
立体感のある縫い上がりは、「スキンステッチ」や「ライトアングルステッチ」と呼ばれ、完全な手縫いでのみ表現可能なディテールです。

これは革の内部を縫い通すという、きわめて繊細な作業と引き換えに、美しい表情を生み出す技法です。
そしてこのステッチを実現するため、針には金属製のものではなく猪毛が用いられます。
猪毛は硬さを持ちながらもしなやかで、レザーの中を自由に弧を描きながら進むことができるため、このステッチには欠かせないものです。
この工程だけで2時間以上を要するドーバーは、「品質のためには時間を惜しまない」というエドワードグリーンらしさが凝縮された一足と言えるでしょう。

さて、「Uチップ」という呼び方、実は和製英語です。
海外では「エプロンフロント(apron front)」「ノルウェージャンフロント(norwegian front)」「アルゴンキン(algonquin)」など、さまざまな名称で呼ばれています。
エドワードグリーンでは、このデザインを「スプリットトウ(split-toe)」と称しています。
そのルーツは、ノルウェーの漁師や北米先住民が履いていた靴にあるとも言われており、出自を辿ると、Uチップは本来ドレッシーというよりアクティブな存在なのかもしれません。

しかしドーバーは、一目でそれと分かるステッチワーク、完璧なバランスのシルエット、そして上質な素材が醸し出す深い色合いによって、他にはないエレガンスを放っています。
スーツにも、ツイードにも、デニムにも自然に馴染みながら、足元に確かな格をもたらしてくれます。
そして丁寧に履きこみメンテナンスを施すことで、得も言われぬ底光りを見せ、オーナーだけの1足が完成されるのです。
誕生以来、ドーバーがUチップの最高峰として語られる理由は、まさにそこにあります。
そして、この一足を生み出したエドワードグリーンというブランドの背景には、長い歴史と揺るぎない哲学が存在します。
ドーバーに魅せられたオーナーたちのブログ「DOVER Club」
合わせてご覧ください。
英国靴の名門 EDWARD GREEN
英国靴には数多くの名門が存在しますが、その中でもエドワードグリーンは、多くの人から最高峰と称されてきました。

130年以上にわたり、常に最高の靴作りを追求し、一切の妥協を許さない手仕事で、私たちの期待に応え続けてきました。
その原点は、創業者である靴職人エドワード・グリーンの情熱にあります。
12歳で見習い靴職人として業界に足を踏み入れた彼は、より上質な靴を作りたいという強い想いに突き動かされていました。

1890年、イギリス・ノーサンプトンに自らの工房を構えた彼は、その理想を実現するため、町でも屈指の職人たちを集め、素材にも工程にも一切の妥協を許しませんでした。
“Excellence without compromise(妥協なき卓越性)”
この誓いのもと、彼は誠実な靴づくりを続けていったのです。
エドワードグリーンの靴は、その完成度の高さから瞬く間に評価を高めていきます。
選び抜かれた上質なカーフレザー、精緻なステッチワーク、そして美しさと快適さを両立するラスト設計。
作家アーネスト・ヘミングウェイやウィンザー公エドワード8世など、時代を象徴する人物たちが愛用した事実は、エドワードグリーンの靴が一流の足元を支える「作品」であることを物語っています。

時代が移り変わっても、エドワードグリーンは創業の地ノーサンプトンを離れることなく、今日まで靴を作り続けています。
現在も工房では60名以上の熟練職人が働き、週に350足ほどの靴を製造しています。
大量生産では決して辿り着けない完成度を求め、フランスやイタリアなどの最高級皮革を厳選。
丁寧な手仕上げによって、奥行きのあるアンティークフィニッシュを生み出します。

またレザーソールには、9か月もの時間をかけてじっくり鞣されたオークバークを採用しています。
樫(オーク)の樹皮から抽出したタンニンで鞣された底材は、硬さと粘りを併せ持ち、履き込むことで独特の返りと味わいが生まれます。
そして素材だけでなく、ラスト(木型)もまたエドワードグリーンの大きな強みです。
クラシックで普遍的なシルエットと、踏まずからヒールにかけての卓越したフィット感は、多くの靴好きを虜にしてきました。

エドワードグリーンにとって「クラフトマンシップ」とは、単なるスローガンではありません。
手作業による裁断や、猪毛を用いた手縫いなど、守るべき技術が確かに存在します。
これらの技術は一朝一夕で身につくものではなく、長い歳月をかけて習得され、次の世代へと受け継がれていきます。
品質のためには時間を惜しまない――それこそが、エドワードグリーンの靴づくりなのです。
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