DOVER Club No.5

DOVER Club
英国エドワードグリーン社のアイコンモデルのひとつである
Uチップ❝DOVER❞をこよなく愛する人たちの入退会自由なクラブ。

 

DOVERは、ラストやスペックを嬉々として語りたくなる靴。
My DOVERストーリーの共有から、
自分たちが享受している価値を伝え、
クラブ員の輪を広げていくことを目的とする。


僕のエドワードグリーンとの出逢いは、先代の故ジョンフルスティック氏が晩年に手掛けた伊勢丹新宿店でのオーダー会です。今でも、手元に届いたチェスナットカラー×ドーバーの重厚感が鮮明によみがえります。幾多の想い出と共に……。

 

当時、深みと濃淡による表情を備えたチェスナットやダークオークを代表とするエドワードグリーンのブラウン系カラーは独創的で、威風堂々とした英国靴に独自カラーの色気が加わることで他にはないオーラを発しておりました。
なかでも、最終進化系のエドワーディアンカラーは靴をキャンパスとしたアートのような色で、とてつもなく仕上げに時間を要するのだとか。

 

 

その翌年(と記憶している)にオーダーしたのは、ダークオークのビューリュウ。ブラインドブローグの超シンプルウイングチップのサンプルに一目惚れをしてオーダーしました。確か同志もいたような。
磨いていたら、右足のバンプ部分が徐々に薄くなってゆきツートンカラーに!天然素材だからこんなこともあると言い聞かせて、必死にブラッククリームで磨いたビターな想い出もありました。

 

2004年9月ミラノでの仕事経由で、初めて当時ノーサンプトンのカウパー通りにあった工場を訪問しました。アパートメントが続く普通の住宅街の中ほどに、緑色の玄関が目印の小さな工場がありました。気を付けないと通り過ぎてしまうくらい、すっかり町になじんでいる小さな工場でした。
重量と作業の効率から、1階がヘビーな重機が必要な底付け部門で2階が縫製部門、最上階が社長室だと説明を受けたと記憶しています。
打合せを前に、先輩や某百貨店のバイヤーが外の空気(タバコですね)を吸いに行ってくると出てゆき僕は一人に。。。僕は英語を話せません。。。
そこへヒラリー社長がいらっしゃいました。記念すべき初対面です。

 

ヒラリー社長は、室内に飾ってある乗馬ブーツや乗馬用の服で着飾ったご婦人の写真のことを熱心に教えてくれました。コーヒーが良いかイングリッシュティーが良いか、そんなお気遣いもいただきました。僕は必死の思いで、全脳内の英単語をかき集めヒラリー社長のおっしゃることを聞き逃すまいと頑張りました。脳に汗をかくほどに!
また、打ち合わせの際には、「ハサミを持ってきてほしい。下の階の縫製職人さんが持っている!」と、まさかの社長命令。震えました笑!
意を決してゆく縫製部門は狭く、「見てよ!隣と腕が当たっちゃうのよ!」と何も聞いていないのに声をかけてくれたお母さん職人さんに「シザープリーズ×指でちょきちょきジェスチャー作戦」でレンタル成功。映画シザーハンズを想い出して良かった!
これをきっかけに…か?海外出張では、だれよりも現地の方に声をかけられるという特技?が覚醒。「言葉ができなくても何とかなる!」の精神が、その後つづく言語能力の開花のさまたげになったのかもしれません。

 

その翌年の3月と記憶しておりますが、現在の工場に移転することとなります。
訪問時には社長室以外は何も残されておらず、最後の訪問者である僕たちのために社長室を残しておいてくれたとのお話でした。

 

新工場はモダンで綺麗な建屋となりました。
ドーバーのハンドソーン(スキンステッチ)は2階の日当たりのよい静かな空間で縫われ、その他の靴づくりは1階のワンフロアで完結できるように大進化。職人さんたちは、広くて綺麗で天井が高い新工場になって、のびのびと働けると喜びを語っていらっしゃいったことを記憶しています。

 

あれから25年あまり、毎年5回ほど逢ってさまざまな事を話し合い、友好を深めてまいりました。今はその役割を後輩へバトンタッチし、木型の開発や新商品の企画などなど進化を遂げてくれています。
「レボリューションよりもエボリューションを大切に」というヒラリー社長の信念のもと、さらに次の世代へ引き継いでゆきたい良縁に感謝しております。

 

 

写真のドーバーは、その6、7年後くらいに手に入れました。
新工場にて、ヒラリー社長が「これが良い!一番価値がある」といってあっさりと決まった(決められた?)光景がよみがえります。
ラストは32、ダークブラウンカントリーカーフでハーフミッドレザーソール。

 

カントリーカーフは、当時すでに廃盤となってしまっていたウィローカーフとともに大好きな素材です。
バーリントンアーケードの当時のショップに飾られていた、スマートなダブルモンクのウェストミンスターと、カーディフよりも大きなパーフォレーションが特徴的なセミブローグのハイスを眺める時間が好きでした。トランペットを眺める少年のような気持ちになります。
ガラス越しの店内では、その後 日本でのイベントに参加してくれることになる紳士、店長のレイモンドさんの接客を見ることができました。
ジャーミンストリートへショップが移ってからも、いつも遠くを歩く僕に気付いてショップに迎え入れてくれたことは、今も暖かな心の景色となっています。

 

 

もう一つ、たいていの靴メーカーがそのように、エドワードグリーンでも注文する際には複写のオーダーシートに手書きでスペック等を記入することになります。ふつうは、エドワードグリーン側が書くのですが、いつの間にか僕が書くことが当たり前になっていました。(3回目くらいから?)
カントリーカーフ素材で商品をオーダーする際は「Country Calf」と書くのですが、当時のテクニカル担当ジョンさんは、僕がカントリーカーフと書く時間を待つのが面倒のようで「CC」と書けば通じるし楽だと教えてくれました。
実は、エドワードグリーンの事務所で字が読みやすいと褒められ有頂天な僕は略すのに気が進まず笑、ジョンさんが不在の時はフルバージョンで気持ちよく書き続けておりました。もちろん後でバレるのですが笑。
試しにクロケット&ジョーンズでCuntry Grainレザーを「CG」と書いたり、トリッカーズのScotch Grainを「SG」と書いてもダメ出しを受けました。ジョンさんルールだったのかも知れません。

 

ラスト:32
ソール:ハーフミッドレザー
アッパー:CC
カラー:ダークオーク
名前:齋藤